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講演名 |
2019-03-06 14:30
小脳除去手術が並進・傾き複合運動中の金魚の前庭動眼反射に与える影響の評価 ○中野仁賀・平田 豊(中部大) NC2018-82 |
抄録 |
(和) |
本研究は,「並進加速度と重力軸に対する傾きにより生じる加速度はいかなる加速度センサでも識別不能」というEinsteinの等価原理により予想される,動物における「傾き・並進識別曖昧性問題」の解法に,神経科学的に言及しようとするものである.内耳に存在する加速度センサである耳石器の出力では,傾きと並進加速度が区別できないにも関わらず,我々は閉眼状態でも両運動を識別して知覚できる.また,各運動時には,その際に生じる視界のブレを抑制するための異なる眼球運動が生成される.例えば,ヒトやサルでは,左右方向の並進運動時には水平性眼球運動が誘発され,前後軸周りの傾き運動時には回旋性眼球運動が誘発される.これまでサルにおいて,小脳の出力では,傾き・並進単独あるいは合成運動時にも,並進運動成分のみが抽出されていることが示されている.また,小脳の基本神経回路構造は魚類から霊長類まで保存されていることが知られている.したがって魚類においても,傾き・並進運動を識別した眼球運動が誘発されるものと予想される.
本研究では金魚を用い,この仮説を検証した.まず,傾き,並進,ならびにそれらの合成刺激を付加可能な小型魚類用実験装置を設計・構築し,傾きと並進運動の振幅・位相関係を調整することにより耳石器への入力が0となるTilt−Translation刺激の付加も可能とした.また,被験体の眼球運動を計測するために,赤外線カメラをこの装置に組み込み,画像処理により両眼眼球運動を自動計測できるようにした.この装置を用い,和金を被験体として,左右方向並進運動(Translation only),前後軸周りの傾き運動(Tilt only),これらを組み合わせたTilt−Translation,位相を反転させて組み合わせた(Tilt+Translation)刺激付加時の金魚の眼球運動計測実験を実施した.また小脳を除去した金魚でも同様の実験を実施した.金魚の両眼が左右に配置されていることから,Tilt onlyでは垂直性眼球運動が生じ,Translation onlyでは特に眼球運動は生じないことが予想される.一方,小脳を除去した金魚では,両運動を識別不能となり,Translation only時にも垂直性眼球運動が生じるか,Tilt only時にも眼球運動が生じなくなることが予想される.正常金魚(n=11)ならびに小脳除去金魚(n=11)での実験の結果,小脳除去群では,予想通り,Tilt onlyならびにTranslation only時ともに垂直性眼球運動が誘発された.一方,正常金魚でも,これらの刺激時に同様の眼球運動が誘発された.初期の予想に反し,左右方向Translation時に垂直性眼球運動が生じることは,実際には金魚の視野内で視覚的に最もリッチな情報を持つ水底の景色のブレを抑制し,安定した視界を得る上で合目的的であると考えられる. |
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(Not available yet) |
キーワード |
(和) |
小脳 / 耳石器 / 前庭動眼反射 / 金魚 / / / / |
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文献情報 |
信学技報, vol. 118, no. 470, NC2018-82, pp. 207-207, 2019年3月. |
資料番号 |
NC2018-82 |
発行日 |
2019-02-25 (NC) |
ISSN |
Online edition: ISSN 2432-6380 |
著作権に ついて |
技術研究報告に掲載された論文の著作権は電子情報通信学会に帰属します.(許諾番号:10GA0019/12GB0052/13GB0056/17GB0034/18GB0034) |
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